今回の研修で私はミラノのランドマークであるスフォルチェスコ城を訪れました。 スフォルツェスコ城の起源は、ヴィスコンティ家が要塞を建設した 15世紀にまで遡ります。この要塞は、1450年に新しいミラノ公、フランチェスコ・スフォルツァによって再建および拡張されました。スフォルツァは、レオナルド・ダ・ヴィンチやブラマンテなど、当時最も有名な建築家や芸術家に城の設計と装飾を依頼しました。 その後破壊や修復が繰り返され、当時星型だった城塞はその一部のみ現存している状態です。
現在この城塞の中にはさまざまな美術館や博物館があり、その中の一つに楽器博物館があります。今回の訪問の目的はこの楽器博物館でした。展示楽器は弦楽器だけでなく鍵盤や管楽器などさまざまです。
この楽器博物館で目玉の一つと言えるのが、ミラノ派を代表する製作家であるジョバンニ・グランチーノによって1662年に作られたビオラです。
このビオラは大変珍しい形をしており、38.5cmという小ぶりなサイズです。 18世紀末頃、バロック楽器はコンサートホールや劇場の規模、新たな演奏技術に合わせて作り替えが行われました。(ピッチが上がり弦の張力が高まったことで楽器への圧力が増す→ネックの傾きの変化、圧力に耐える為にバスバーの強化やネックとボディの接続方法の変化かどが起こる) ストラディヴァリ含め昔の巨匠たちの楽器の多くはこのような作り替えが行われて現在に至りますが、このビオラは当時のままの状態を残しています。指板が短く、出せる音域がかなり限られていますが、1995年に修復されてからはコンサートで使われることもあるようです。 この形状は16世紀にロンバルディア地方で使われていたモデルに倣っており、裏板にはロンバルディア平原のポプラが使われ、ネックは内部から3本の釘でボディに固定されています。指板とテールピースは黒檀が象嵌で装飾されています。
その他の展示で個人的に特に面白いと思ったのが、さまざまな形の弓がまとめられたショーケースです。 最初の原始的な物から長さや形状が変化し、技術が進歩して現在のようなねじ式になるまでの変遷が興味深いと思いました。
修理スタッフ:布川桃子(写真&文)